人気アニメ、ゲーム、映画などからオリジナルIP(※)まで、ホビー関連製品の企画・製造・販売を手がける株式会社壽屋。同社は創立70周年を機に、かねてより懸案事項だった製品ポータルサイトのベースシステムのリニューアルに着手しました。旧サイトはシステムの継ぎ足しを重ねた結果、アップデートのできない状態でしたが、リニューアルした現在は安心して最適な情報をお客様に届けられるサイトとなっています。
今回は、本プロジェクトを推進する営業本部 営業グループ プロモーションチームの髙橋様、栁町様に、SITEMANAGE導入の決め手やリニューアルまでの経緯、導入による成果、今後のビジョンなどについて詳しくお話しいただきました。
※ IP(Intellectual Property)
IP(知的財産)とは、クリエイティブな活動により生み出されたオリジナルのアイデア・創作物など価値を持つものを指します。
IPの代表例として、アニメ・ゲーム・小説・映画などのコンテンツとそのキャラクターなどがあり、そのIPを守るための権利としては、著作権、特許権、商標権、意匠権などがあります。
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導入目的
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- アップデートができないほど複雑化したベースシステムを改善したい
- スマートフォンサイトの最適化を行いたい
- 日本語・英語それぞれで管理していたサイトの運用コスト削減と、業務効率化を図りたい
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導入理由
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- 日本語のページと英語のページを1対1で切り替えられた
- 自社で一貫して開発されているため、柔軟なシステム改修ができると感じた
- 他社と比べ、コスト面でも優れていた
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導入成果
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- 日英サイトの統合により、英語サイトのPV数がリニューアル前の1.2倍になった
- 製品の関連キーワードにおいて、検索順位がUPした
- スマートフォンサイトの閲覧性の向上
- 「ページの更新予約機能」が実装され、人的コストの削減につながった
目次
10年近く前に立ち上げられ、複雑化したサイトのシステムを改善したい
―はじめに、壽屋の事業内容についてご紹介いただけますか。
髙橋様:1953年に設立された壽屋は、プラモデルやフィギュアを主力商品としてホビー関連事業を展開しています。そのほか、女性向けのラバーストラップやアクリルスタンドといった雑貨類、3Dモデル(VRアバター)の制作・販売も手がけていますね。
髙橋 宏史様 株式会社壽屋 営業本部 営業グループ プロモーションチーム リーダー
栁町様:これまで、版元さんからキャラクターの権利をお借りしてフィギュアやプラモデルなどの製造をしてきました。ですが現在は人気イラストレーターを起用したオリジナルプラモデルシリーズや同じ世界観を共有する派生商品、クリエイター向けのシリーズなど、オリジナルIPの立ち上げにも力を入れています。
―SITEMANAGEを導入される前、どのような課題がありましたか。
髙橋様:弊社は製品情報やメーカー発信のブログ記事、イベント情報、店舗情報などを掲載したポータルサイトを運用しています。しかし、そのベースとなるシステムが問題でした。そのシステムが立ち上げられたのは10年近く前。当時はまだスマホがさほど普及しておらず、PCで閲覧する前提でページが作られていたんです。
その後、スマホの台頭を受け、それに対応するために必要なシステムや機能を継ぎ足していった影響で、まるで違法建築のように複雑化してしまいまして。何か新しいアップデートをかけたくても、プラグイン同士が競合して改修すらできないという状況でした。そんな中でも、できる範囲で何とかスマホで見られるようにしていました。
栁町様:また、弊社の製品は海外の問屋様から小売店様を通してアジア、北米、ヨーロッパなどで販売していただいているのですが、海外でWebプロモーションを強化したくても、英語サイトの利便性が悪いという点も課題でしたね。たとえば、英語の言語切り替えを行うと、トップページに一度戻されてしまうんです。英語のページと日本語のページでシステムがそれぞれ独立しているため、連携できないのが原因でした。
栁町 空様 株式会社壽屋 営業本部 営業グループ プロモーションチーム チーフ
髙橋様:弊社のポータルサイトは日本語がベースで、アジア、北米、ヨーロッパなどのお客様が商品の情報を得ようすると、海外の小売店様のホームページをチェックしなければなりませんでした。しかし、弊社のサイトでは商品情報だけでなく、遊び方の提案や企画者の開発秘話などメーカーならではの発信も行っています。海外のお客様にとっても魅力的な内容であるはずなのに、届けられない。それは何としても解消しなければと考えていました。
―SITEMANAGEを知るまでの経緯を教えてください。
栁町様:本格的にサイトリニューアルへ動き出したのが、70周年を目前に控えた2021年12月。サイトを運用している50名以上のスタッフに要件をヒアリングし、意見をまとめていきました。
髙橋様:ヒアリングと並行して当時運用していたサイトの課題点も同時に洗い出しを行なっていきました。なかでも、英語のページと日本語のページを1対1で対応させられる機能はリニューアル計画の当初から必須だと感じていました。まずそれができるWeb制作会社を探していたところ、栁町が展示会でシフトさんにお会いしたんです。
(左) 濱野 和洋 (右) 塩野 晴 シフト Webディレクター
濱野:そうですね。現担当である塩野の前任者がお話をさせていただいたと思います。ご提案まで何度かミーティングを重ね、具体的な要件を詰めていきましたね。要件リストの項目は200件以上にのぼりました。
優先度の高い要件だらけ。ポータルサイトならではの複雑な要望に応えてくれた
―要件については、どのような話し合いをされたのでしょうか。
髙橋様:前述したとおり、弊社が運用しているのはただのカタログサイトではなく製品企画者のブログや実店舗の情報も掲載するポータルサイト。そのため、ユーザー様にとって有益であろう情報の見せ方、情報を提供する我々が管理運営する上で必要な機能などの要件を洗い出していった結果、ものすごい量になってしまいまして……。
そこで要件にA、B、Cと優先順位をつけ、「これは必要」「やはりこれの優先順位を下げよう」とあれこれ議論をしたのですが、結局ほとんど優先順位が高いような状態になってしまい、10社以上にお声がけして、最終的にシフトさん含め「できます」と請け合ってくださった4社に絞りました。
濱野:要件の難易度よりもリリースまでに間に合うかという問題の方が大きかったため、お互い妥協案を出し合いながら「まずはリリースまでに必要な機能に絞り、期限的に余裕があれば他の機能もプラスαで実装しましょう」と落とし込んでいきましたね。
―最終的にSITEMANAGEを選んだ決め手は何だったのでしょうか。
髙橋様:理由は3つあります。まず、CMSを自社で一貫して開発しているため、柔軟なシステム改修ができると感じたから。次に、弊社の必要とする条件を備えたサイトや、大手通販サイトの制作実績を有しており、信頼性が高いから。3つ目は、CMS上で見ることができるアクセス解析のプラグイン(SiteReport)が魅力的だったからです。
栁町様:コスト面でもご調整いただきましたね。
髙橋様:4社の中からシフトさんに決め、上層部へ提案して最終的にゴーサインをもらいました。
3~4時間のミーティングを重ね、運用に合わせたCMSを構築
―導入が決定した後、リニューアルまでの主な流れを教えてください。
栁町様:導入決定後、本格的な打ち合わせに入ったのが2022年の4月~5月頃です。4~5か月間にわたり、最低週1回、必要に応じてプラス1回はミーティングの時間を設けていました。ミーティング1回につき3時間はかけましたね。延長戦に入ると4時間程度でしょうか。
髙橋様:また、進捗に応じてWebミーティングで画面共有しながら認識をすり合わせました。結局、仕様書は見出しを含めて250ページ以上。リリース後、栁町と「3桁ページのパワーポイントって滅多に見ないよね」と話していました。(笑)
濱野:開発していくうえで、「壽屋さんの運用に合わせたCMSにするためにはどうしたらよいか」のイメージがずれてしまわないよう、ヒアリングに注力しました。
とりわけ、「アクセスを落としてはいけない」というプレッシャーは強かったです。リニューアルするとアクセスがどうしても減ってしまいますから。そこでマーケティングチームと連携し、サイト内SEOの構造面をフォローしてもらいながら実装を進めました。
―ほかにも、開発を進めていくうえで意識した点があれば教えてください。
髙橋様:「『ブログを書けるスキルがあれば運用できる』というところまで落とし込んでほしい」「旧システムで利用していたWordPressに近い使い勝手にしてほしい」とお願いしました。
弊社のサイト運用者は現在60名以上。企画担当や店舗の支援チームなど、そのほとんどがWeb周りに触れる機会のなかった現場スタッフです。そのような「Webサイト作成未経験のスタッフでも操作できるシステムにする」というのが前提としてありました。
打ち合わせを重ねながら慎重に開発を進め、リニューアルにこぎつけたのが2023年7月下旬。スマホで閲覧するユーザーに向けてしっかり機能するようにしつつ、日本語ページと英語ページの切り替えを含めた優先度Aの要件を、ほぼすべてクリアしていただいたという実感があります。
悩みの種だった英語サイトのPV数が1.2倍に
―リニューアルから3~4か月経過しましたが、成果についてはいかがでしょうか。
栁町様:SNSなどの反応を見る限り、お客様からは「見やすくなった」という感想をいただいています。リニューアル前は日本語サイトの1/10程度しか閲覧されていなかった英語サイトのPV数も1.2倍になりました。この数字はまだまだ伸び代があると思っています。
日本語サイトと英語サイトを紐づけたことで、アクセスしてきた海外のお客様がしっかり言語を切り替えながら閲覧してくださっているのだと感じています。独立していたシステムが統合され、画像登録が1回で済むようになったのも、非常に満足しているところです。
SEO対策の一環として、サイトのカテゴリーを増やしたことも功を奏しています。たとえば、従来は「プラモデル」という大きなくくりで作成していたキーワードを、「〇〇プラモデル」「○○パーツ」などジャンルや仕様にあわせて、もう一段階細分化したのです。結果、検索順位の低かった商材も関連キーワードで検索上位に入ってきていますし、検索流入数も増加しています。お客様が得たい情報をすぐに取りにいけるような構造になりました。
キーワードの設定にあたり、シフトさんのマーケティングチームの方に事前調査をお願いして「このプラモデルがどういうキーワードで検索されているのか」などを調べ、実際に数値化していただいたことで、検索されやすいワードを見出しに盛り込むこともできました。
―実際に運用しているスタッフさんからの反応はいかがでしょうか。
髙橋様:旧システムと項目名やフォーマットなどを合わせていただいたため、思っていた以上にスタッフの運用はすんなり移行できている印象です。ただ、実際に使用してみて「この機能とこの機能の順番が逆だとミスがなくなると思う」「入れ子構造になっている部分をもっと整えてほしい」といった意見も積極的に上がってきています。細かい内容ではありますが、それに応えることで運用コストの削減になればという観点から要望を取捨選択し、シフトさんに随時調整をお願いしていますね。
現在進行形で優先度B、Cの要件に沿った改修をしていただいている最中なので、大変かとは思うのですが……。
濱野:改修作業自体は、提案時にいただいた要件リストの9割ほどまで迫ってきていると思います。
栁町様:シフトさんのシステムは自社開発ですから、不具合が起きてもすべて社内で検証していただける。だからこそ、安心して改修の依頼ができます。
―逆に、ここをもう少し改善してほしいという点はありますか。
栁町様:これまでWordPressで使用できていたテンプレートがない点ですね。髙橋が話したとおり、Webサイト作成に造詣の深くない者が運用しますので、テンプレートは必要なんです。ただ、新しく開発のうえ、機能として備えていただく算段はすでについています。
塩野:テンプレートについては、現在新たな機能の開発を進めている段階です。毎週の定例会議で動きを確認していただき、ご指摘いただいた内容を元に修正を重ね、おおむねご要望に合ったものができあがってきているのではないかと思います。
栁町様:あとは、アップロード画像の管理などを行うファイルマネージャーの利便性が少々悪いでしょうか。こちらも新バージョンでどんどん改善されていくと伺っているので、期待しています。
塩野:現在壽屋様に使っていただいているのは、改良前の「旧ファイルマネージャー」になります。壽屋様だけでなく、以前からほかのお客様や社内でも改善点として挙げられており、最近「新ファイルマネージャー」としてリニューアルしました。
新ファイルマネージャーではインターフェースの改善やフォルダの個人管理、操作権限の制御などの機能も追加されておりますので、より便利にお使いいただけるのではないかと思います。
現状、リニューアル前のサイトの画像データをすべて取り込んでおり、旧ファイルマネージャーの中身が煩雑になっていることもありますので、新ファイルマネージャーで新サイト用に運用することも可能になるかと思います。こちらの実装についても話を進めている段階です。
ページの更新予約機能実装で、運用コストを大きく削減
―開発を振り返って、印象的なことは何ですか。
栁町様:ページの更新予約機能の実装ですね。これまでWordPressではできなかったけれど、一番やりたかったのが「ページの更新予約」。商材の性質的に、発売月変更のお知らせやイベント情報の更新告知を打つことがあります。
SITEMANAGE導入前は、その作業を人力かつ、リアルタイムで行っていました。夜遅い時間や休日に告知される場合、担当者がその時間まで張り付いていなくてはなりません。これをシステム的にできるようになったのは、本当にありがたいですね。
髙橋様:弊社のメイン顧客は2、30代から50代くらいまでの方です。そのような学生・社会人のお客様が弊社のサイトにアクセスしやすいのは学業や仕事を終える平日18時~19時ごろと休日ですが、なにぶん弊社の定時が18時で土日祝日はお休みですので、それにあわせて情報を更新しようとすると残業を余儀なくされたり、更新したいタイミングでできないといったジレンマがありました。更新予約機能の実装により、事前に全部の記事を用意してボタン一つで設定・更新することが可能になり、運用コストの大きな削減につながりました。
濱野:そこが運用に合わせて苦労した点でしたね。本番公開用ページとは別に、イベント当日に書き換わる情報を社内で一度チェックできる更新用の環境を準備したうえで、予約セットされた内容が本番公開用にアップデートされるという仕組みを開発しました。
更新用だけを予約セットしたいときもあれば、本番用にセットしたいときもあると伺ったのですが、それぞれ要件としては別です。そのため、運用に合わせた設計を丁寧に進めていきました。
髙橋様:アニメやゲームのキャラクターなど、版元さんから版権をお借りして商品化やイベント開催する場合、その情報が指定のタイミングより前に出ることは絶対に許されません。それを死守するための機能を何度もシフトさんにご相談させていただき、調整に調整を重ねて、「それだったらいけます」と力強いお言葉を頂戴しました。
濱野:ほかの設計も進めながらではありますが、1か月くらいかけて詰めた記憶があります。
―今後、SITEMANAGEを活用して実現したいことはありますか。
髙橋様:先に申し上げたとおり、弊社はアジア、北米、ヨーロッパなどでも展開しておりますので、日本語・英語以外にも多言語化に耐えられるシステムにしたいとお願いしています。ゆくゆくは中国語、韓国語、イタリア語、フランス語などさまざまな言語のサイトを構築する未来もあるのではないでしょうか。もしスマホの普及のような時流の変化が起きても、フットワークの軽いシフトさんならすぐご対応いただけるという信頼があります。
また、主力商品のほか、新しい事業を大きくしていきたいと考えたときに見せ方を含めてシフトさんにご相談できるというのは本当に心強いですね。
栁町様:SITEMANAGEの導入により、人的コストが削減されたのを実感しております。今後は、そこをさらに進めていきたいです。具体的には、弊社の製品データベースと連携してCSVファイルをインポートできるシステムを開発。そのシステムを利用して製品ページを半自動で作成する……というように、運用者にかかる負荷を下げていくのが目標ですね。
塩野:ありがとうございます。ベースシステムの調整はもちろん、オリジナルIPのサイト運用など、さまざまなところでお手伝いできれば幸いです。
担当者からのコメント
壽屋様の顔でもある製品ポータルサイトを構築させていただきました。
世界からも人気のある、日本のプラモデル・フィギュア界を代表する壽屋様のお力になることができ、大変光栄です。
栁町様、髙橋様をはじめプロジェクトに携わった皆様に改めて、感謝申し上げます。壽屋様のご発展と共に、今後もポータルサイトをより良いものにしていきたいです。
壽屋様の製品ポータルサイトはエンドユーザー視点での改善はもちろん、社内で運用されるご担当者様の声も取り入れながら構築いたしました。フロント側だけでなく、管理・サイト運用に課題を持っている方にも、貴社専用にカスタマイズできるSITEMANAGEがおすすめです。
業界や業種を問わず、多くのお客様の課題解決に貢献した実績がございますので、ぜひ一度ご相談ください。
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この事例を担当した人
ディレクター
濱野 和洋
前職では、主には社内SEとして業務システム、ECサイトなど様々なシステムを開発会社と協力して構築してきました。小売業に13年勤めていいたため、業務システムに必要な機能、運用面まで経験が豊富です。 シフトでは、大規模なECサイトやポータルサイト、業務システムの案件を担当することが多いです。