IRサイトとは?最近のトレンドや制作に必要なことについて解説
はじめに
近年、企業の間で、株主や投資家に対して財務状況などの投資に必要な情報を提供し、資金調達を有利に行うIR(Investor Relations)という活動が活発化しています。その一環として、企業のホームページにIR専用のサイトを設置する企業が増加しています。
そこで本記事では、近年のIRのトレンドや傾向、東証市場区分見直しによる影響、IRサイト制作に必要なことなどについて解説します。IRサイトに関する情報を詳しく知りたい方は、ぜひご覧ください。
目次
IRサイトとは
そもそもIRとは、企業が株主や投資家に対して投資に必要な情報を提供する活動の総称です。そうした情報をWeb上で発信するためのサイトを「IRサイト」といいます。現在では、多くの個人投資家や機関投資家、海外投資家が企業情報を集めるためにIRサイトを活用していることから、IRにおいてWebサイト運営は必須課題であるといえるでしょう。この章では、IRサイトとはそもそもどのようなものなのかについて、詳しく解説していきます。
IRサイトの主なターゲット
IRサイトを制作するうえで、意識する主なターゲットを3つ紹介します。
個人投資家
個人投資家とは、企業に所属せず個人で投資活動を行い、利益を上げる投資家のことです。企業に所属をしていないため、自身の資金を自己判断で投資します。
個人投資家というと、デイトレーダーと呼ばれる日単位で株の売買を行う人を想像するかもしれませんが、優待株主や積立投資を行なっている人も個人投資家に該当します。
機関投資家
機関投資家とは、保険会社や金融機関、年金基金などの大口投資家のことです。個人投資家とは比較にならない大きな資金を用いて、株式や債券で運用を行います。日本の上場企業の株の大半を機関投資家が有しているため、市場への影響力が大きい存在です。
海外投資家
海外投資家とは、日本国外に拠点をもつ外国籍の個人投資家や機関投資家のことです。近年、海外投資家の日本の株市場におけるシェア率は高く、今後さらに増えることが見込まれています。自社の企業情報を理解してもらうためには、自社の企業情報を英語などの主要な言語に対応させることが必要です。
IRサイト評価ランキング
IRサイト評価ランキングとは、日本国内の上場企業を対象に、年に1度IRサイトを独自の基準で評価しているランキングです。主な評価基準は、サイトの使いやすさや情報が充実しているかなど、その企業によって評価項目が異なり、専門のアナリストがそれぞれ評価します。以下では、主なランキングを3つ紹介します。
大和IR インターネットIR表彰
「大和インベスター・リレーションズ」によるIRサイト評価ランキングです。最近のランキングでは、ESG情報の開示拡充が含まれたことやサステナビリティ部門が新設されるなど、年々刷新されています。
インターネットIR表彰
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インターネットIR表彰 |
開始年 |
2000年 |
調査時期 |
6~10月 |
調査範囲 |
企業ホームページ |
表彰区分 |
最優秀賞、優秀賞、優良賞、サステナビリティ部門賞 |
日興アイ・アール ホームページ充実度ランキング
「日興アイ・アール」によるIRサイト評価ランキングです。2021年には非財務情報関連の評価項目が追加されるなど、需要に応じて評価項目が追加されています。また、ステークホルダーの視点から評価される特徴があります。
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ホームページ充実度ランキング |
開始年 |
2003年 |
調査時期 |
6~9月 |
調査範囲 |
コーポレートサイト(商用サイトは除外) |
表彰区分 |
最優秀サイト、優秀サイト、優良サイト |
Gomez(ゴメス)IRサイトランキング
「Gomez」によるIRサイト評価ランキングです。2021年には、ESG投資の拡充に伴いサステナビリティに関する項目が重視されました。また、Webサイトの使いやすさの項目では、検索機能やサイト表示速度なども評価基準として追加されています。
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ゴメス IRサイトランキング |
開始年 |
2007年 |
調査時期 |
9~11月 |
調査範囲 |
WebサイトのIR情報 |
表彰区分 |
優秀企業金賞、優秀企業銀賞、優秀企業銅賞 |
東証の市場区分見直しによるIRサイトへの影響
2022年の4月4日に、東証の市場区分が従来の「東証一部」「東証二部」「東証マザーズ」「JASDAQ」の4つの区分から、「プライム」「スタンダード」「グロース」の3つの市場区分に見直されました。
市場が見直された背景として、それぞれの市場の区別が曖昧で、投資者の利便性が低い点や上場企業の持続的な企業価値の向上に関する動機づけが不十分であった点などが挙げられます。見直しによって、上場企業3,777社のうちプライムには1,841社、スタンダードには1,477社、グロースには459社が一斉移行されました。
市場 |
特徴 |
影響 |
プライム |
国際的な機関投資家と前向きに交渉できる規模の流動性とガバナンス水準をもつ企業向けの市場 |
● さまざまな投資家との対話の活性化 ● 国際社会を視野に入れた投資家へのコンテンツ増加 ● SDGsやESG関連の情報増加 |
スタンダード |
公開市場における投資対象としての一定の流動性とガバナンス水準を備えた企業向けの市場 |
● プライム市場を目標とした企業活動の訴求 ● 個人投資家へ向けたコンテンツの増加 |
グロース |
高い成長可能性から一定の市場価値が得られている一方で、事業実績から相対的なリスクが高い企業向けの市場 |
● 高い成長可能性や将来性、競争力をアピール ● 規模や成長に応じたガバナンスの提示 |
市場区分見直しにおけるIRサイトの傾向とトレンドの変化
市場区分が見直されたことにより、以前のIRサイトの傾向やトレンドにも変化がみられました。ここでは、IRサイトの新しい傾向とトレンドをご紹介します。
更新が多い情報をトップページで訴求
株価の情報や最新のIR資料、IRニュースなど、情報が次々と変わるようなコンテンツに関して、トップページで訴求を行うことがトレンドとなっています。これは、投資家がタイムリーな情報を常に求めていることが理由に挙げられるでしょう。
また、パソコンで見られることだけでなく、スマートフォンで見られることも考慮してサイトをデザインする必要があります。
サステナビリティに関する情報の増加
近年話題に上がることが多いサステナビリティは、IRサイト評価ランキングの評価項目として重要視され始めています。従来、投資は財務情報を考慮して行われていましたが、現在では環境(Environment)・社会(Social)・ガバナンス(Governance)の要素を考慮したESG投資が拡大傾向にあります。
個人投資家に向けたコンテンツの充実
ゴメス IRサイトランキングには、個人投資家向けコンテンツに関する評価項目があり、およそ7割の企業のIRサイトに掲載されていますが、その充実度は企業によって異なります。
東証の市場区分見直しに伴い、個人投資家の取引が今後活性化していく見込みであることから、このコンテンツの充実を検討してもよいかもしれません。しかし、海外では日本との投資文化の違いから、個人投資家に向けたコンテンツは少ない傾向にあります。
主な業績指標をトップページで訴求
売上や営業の利益や1株あたりの配当金、株主資本など主な業績の指標をトップページで大きく取り上げて訴求することは、近年少なくありません。主に海外のトレンドですが、投資初心者にわかりやすいことから、今後日本でも流行る可能性があります。
また、主な業績指標にはサステナビリティや女性管理職の割合、CO2削減量に関する項目も増えていくとみられています。
IRサイト制作に必要なコンテンツ一覧
ここでは、それぞれの投資家が投資をするうえで、IRサイトに必要なコンテンツの一覧を紹介します。コンテンツを充実させることで、企業理解や投資対象としての魅力を高めることができるため、確認していきましょう。
経営方針
企業の考えや方針を示すためのコンテンツです。以下のような項目を盛り込むようにしましょう。
- トップメッセージ
- 経営情報
- コーポレートガバナンス
- リスク情報
- マーケットデータ
- 事業データ
- ディスクロージャーポリシー
会社情報
以下のような、会社に関する情報を示すことで、自社の存在意義を伝えます。
- 企業情報
- 経営理念
- 事業内容
- 経営陣紹介
- 沿革
- グループ会社
財務・業績情報
企業活動に応じた業績を紹介するためのコンテンツです。以下の項目を盛り込みましょう。
- 決算ハイライト
- PL(損益計画書)
- BS(貸借対照表)
- CF(キャッシュフロー計画書)
- チャートジェネレータ
ニュース
IRに関するトピックをまとめます。
- IRニュース
- プレスリリース
IR資料
企業の決算や説明会に関する情報を伝えるためのコンテンツです。
- 決算説明会資料・動画
- 有価証券報告書
- 事業報告書
- アニュアルレポート
- 資料ダウンロード機能
- 株主通信
株式情報
自社の株式に関して紹介します。配当の情報は個人投資家が特に重要視しています。
- 株価情報
- 株式状況
- 株主総会
- 配当金
- アナリスト情報
- 社債
その他
サイトを訪れたユーザーが情報収集しやすいようにするためのコンテンツです。基本的には個人投資家に向けたものが多い傾向にあります。
- CSR
- IRカレンダー
- お問い合わせ
- RSS
- SDGs情報
IRサイトを制作するうえで重要な3つのポイント
IRサイトに必要なコンテンツについてまとめましたが、ただコンテンツを作るだけでは、株主や投資家に選ばれるIRサイトとはいえません。以下では、IRサイト制作に欠かせない、重要な3つのポイントについて紹介します。
1.サイトの操作性や情報の取得性が高い
IRサイトのコンテンツ一覧でも紹介しましたが、IRサイトは情報量が非常に多いサイトといえます。そのため、ユーザーにとってそれぞれのコンテンツを見つけやすく、探しやすくなるように設計することが重要です。
また、IRサイトは新しい情報をすぐにユーザーに届けるために、情報更新頻度を高める必要があります。できるだけ手間をかけずに情報を更新できるサイトを制作しましょう。
このような即時性のあるサイトを制作する場合は、CMSがおすすめです。CMSはサイト制作後の運営がスムーズに行えます。加えて、アップデート時にセキュリティ面の強化や拡張機能の追加なども可能です。
2.コンテンツが充実している
コンテンツが充実しているといっても、業績や財務情報をたくさん掲載するだけではありません。投資をするうえで投資家がチェックしている箇所は、「どのような事業を行なっているか」「将来どのような企業になりたいか」などがわかりやすいかどうかです。
また、CSRやESG投資、SDGsなどの活動は、今後重要視されていくポイントとなるでしょう。そして、もう一つ重要なことが、個人投資家や機関投資家、海外投資家ごとにコンテンツを意識することです。それぞれに向けたコンテンツを用意することで、訴求が高まるでしょう。
3.技術的な社会情勢に対応している
近年、スマートフォンの普及により、サイトのデザインを一新する企業が増えています。仮にスマートフォンに対応したサイトを制作していない場合、それだけで投資機会の損失につながることも考えられます。そのため、SNSや多言語化への対応など技術的な対応は必須です。
また、株主通信や各種レポートなどを印刷物ではなく、Webカタログとして掲載すると利便性の向上につながります。加えて、IRサイトランキングがどのような評価基準で評価しているかについて認識しておくことは、IRサイトの認知向上に効果的です。
シフトでIRサイトを制作する際のポイントと事例
弊社株式会社シフトでは自社開発したCMSパッケージ「SITEMANAGE」でIRサイトを制作しています。ここでは弊社がCMSでIRサイトを制作する際のポイントと制作事例について紹介します。
シフトのIRサイト制作のポイント
弊社でIRサイトを制作する際は、主に以下の2点をCMSの機能として持たせることが多いです。
承認機能を持たせる
弊社でIRサイトを制作する際は、必ずといっていいほど承認機能をCMSに持たせて提供しています。
承認機能の使われ方としては、公開されているコンテンツがある状態で、次の更新データをCMS上で非公開のまま作成します。その内容を承認者が確認して、問題がなければ承認者が「承認する」という処理を実行し、ようやく公開できる状態になる。といった感じです。
IRのような絶対に間違えられない情報の場合は、このような承認機能は必ず必要になります。お客様によってはこの承認者が複数いる場合もあるので、その場合は承認機能を多段階で実装するケースも少なくありません。
権限管理機能の搭載
IR情報はIR担当以外の社員に公開前に見せることができないケースもあります。IR担当以外の担当者もCMSを操作できる場合、権限の制御を行っておかないと、他の担当者もIR情報を閲覧できるようになってしまいます。
そのため、事前にCMSで管理している情報を、誰が閲覧・操作できるのか、事前に権限設定できるように制作するケースが多いです。
シフトのIRサイトの制作実績
ここでは弊社シフトで制作したIRサイトの実績をご紹介します。
柿安本店様
東急リアル・エステート・インベストメント・マネジメント様
IRサイトを制作する場合は、E-IRのようなIR情報更新サービスを使うケースも多いですが、弊社の場合は独自CMS「SITEMANAGE」で制作するので、すべてのデータをSITEMANAGEで管理することが出来ます。SITEMANAGEはオンプレミス型のCMSなので、重要なIRデータを安全に管理できるのも特徴のひとつです。
IRサイト制作をご検討中の方は、お気軽にご相談ください。
IRサイト まとめ
IRサイトを制作するうえで、閲覧するユーザーを常に意識してコンテンツを充実させ、日々サイトの向上について怠らないことが大切です。また、IRサイトを運営する際は、情報をすぐに反映させる「即時性」が重要となります。そのため、IRサイトを制作した後のことも考え、サイト運営がスムーズになるようなCMSなどを使用するのがおすすめです。