ECサイトのAPI連携をわかりやすく解説!事例から学ぶ活用方法
はじめに
ECサイトの構築やリニューアルでAPIを利用することになったけれど、APIについていまいちよくわかっていないという人も多いのではないでしょうか。本記事では、APIの概要やAPI連携により得られるメリットなどについて解説します。
記事の後半では、APIの導入方法やECサイトへの導入事例も紹介しているので、最後まで読んでいただくことでAPIへの理解がより深まるはずです。
目次
そもそもAPIとは
APIとは、「Application Programming Interface(アプリケーション・プログラミング・アプリケーション)」の略語で、アプリケーションやソフトウェアとプログラムをつなぐことを意味します。インターフェースとは、何か2つのものをつなぐ際の境界面や接点のことです。
また、ソフトウェア同士を結ぶAPIと呼ぶのに対し、マウスとパソコンをつなぐ際のような機器同士の接点のことを「ハードウェア・インターフェース」と呼びます。
APIは、ECサイトでの電子マネー決済やSMSを使った認証サービスによく使用されています。
Web APIとの違い
「Web API」とは、HTTPやHTTPSを使うAPIのことです。APIとWeb APIの違いは、共通のプログラミング言語でなければ共有できないことが多いAPIに対し、Web APIの場合は異なるプログラミング言語であっても使用できるといった点にあります。
一般的に、「API連携」といわれれば、多くの場合で「Web API」のことを指しているといっても過言ではありません。それほど、現在ではWeb APIが主流となっており、ECサイトで利用されているAPIもWeb APIである場合がほとんどです。ECサイトを構築する際にWeb APIを活用することで、顧客データや商品の在庫データを外部システムで管理することができたり、決済サービスの機能を実装することができたりします。
本記事でも、Web APIを中心に解説していきます。
WebAPIの種類
Web APIには、いくつかの種類があります。以降では、Web APIの種類ごとに、その特徴を解説していきます。
XML-RPC API
XML-RPCとは「XML Remote Procedure Call(XML・リモート・プロシージャ・コール)」の略で、XML-RPC APIは、XMLを使用して通信が行われているAPIのことです。
1960年代に誕生した通信方法で、以前はブログなどで使用されていました。XML-RPC APIは、REST APIに替わったため、現在はほぼ使われていません。
SOAP API
SOAPとは「Simple Object Access Protocol(シンプル・オブジェクト・アクセス・プロトコル)」の略で、SOAP APIはXML-RPC APIの次に誕生したAPIです。
SOAP APIも、XML-RPC APIと同様にXMLを使用して通信します。長い間使用されてきたAPIですが、XMLが少々複雑であったため、後にシンプル化したRESTが誕生しました。
REST API
REST APIは「Repesentational State Transfer(レペゼンテーショナル・ステイ・トランスファー)」の略で、SOAP APIをシンプル化してより使いやすくしたAPIです。
REST APIでは、XMLの代わりにJSONが使われており、専門的な知識がなくても分かりやすく、すぐに理解できるのが大きなメリットです。REST APIは、現在のWeb APIの主流となっているため、SNSなどさまざまな場面で使用されています。
REST APIの4原則
シンプルかつ効率的に情報のやりとりを行うため、REST APIには4原則が設けられています。
1.アドレス可能性
1つ目は「アドレス可能性」です。これは、1つのURLをAPIに送信すると、すべての情報を取得できる仕組みです。
この仕組があることで、知りたい情報のURLを1つずつ作成する必要がなくなり、クライアント(ユーザー)側の手間を省くことができます。
2.ステートレス性
2つ目は「ステートレス性」です。これは、サーバーがクライアントの情報を残さないという仕組みです。
要求されたものに対してのみレスポンスする設計で、情報管理の手間や運用コストの削減ができます。
3.接続性
3つ目は「接続性」です。これは、ある情報に別のリンクを含めることができる仕組みです。
この仕組によって、効率よく他の情報に接続することができます。
4.統一インターフェース
4つ目は「統一インターフェース」です。これは、統一された方法で情報をやりとりする仕組みです。
あらかじめ決められたHTTP(GET、POST、PUT、DELETE)を使用して、「取得」「作成」「更新」「削除」の操作を行い、結果はXMLやHTML、JSON、CSV、プレーンテキストなどの統一されたデータで返されます。
たとえば、「https://example.com/users/001/」のようなURLだと、クライアントが取得したいのか作成したいのかの意図が分かりませんが、前述のHTTPのいずれかをURLに入力することで効率よく処理することができます。
ECサイトでAPI連携が必要になるケース
大中規模のECシステムを構築する場合は、業務効率化やセキュリティ保護の観点からAPI連携が必要です。以降では、ECサイトでAPI連携が必要になる主な2ケースを紹介します。
基幹システムなどの外部システムと連携が必要な場合
販売管理システムのような基幹システムや配送に必要な送り状発行システム、決済サービスなどの外部システムと連携をする場合はAPI連携が必要です。
外部システムと連携する主なデータ
APIを利用して外部システムと連携すると、以下のようなデータを取得することができます。
- 顧客情報
- 商品情報
- 在庫情報
- 受注情報
- 出荷情報
連携することによって実現できる主な処理
APIを利用し、前述のデータと連携させることで、以下4つの処理を実現することができます。
- 登録
- 取得
- 更新
- 削除
APIを利用することで、これらの処理がスムーズに行えるため、時間や資金のコストを大幅に削減可能です。
ECサイトと基幹システムとの連携については、こちらの記事で詳しく説明しています。
ECサイトと基幹システムを連携させる3つの方法!メリットと注意点を解説
外部Webサービスを利用してECに機能や情報を取り込む場合
APIは、レコメンドエンジンや商品検索エンジン、ID決済(Amazon Payや楽天ペイなど)の外部Webサービス機能をECサイトに取り入れる際に必要です。これは、食品やファッション通販サイトなどの物販を行っているECサイトのほか、電子書籍や動画、音楽などのデジタルコンテンツを販売しているECサイトにも当てはまります。
ECサイトでAPI連携する6つのメリット
ECサイトでAPI連携をすると得られるメリットについて、見ていきましょう。
1.開発期間の短縮とコスト軽減ができる
API連携により、大幅な肺活期間の短縮とコスト削減が可能です。APIを利用しない場合、膨大なコストを要して外部システムとECシステムをつなぐためのシステムを開発する必要があります。
開発期間や初期費用を抑えるためにも、API連携の利用はおすすめです。
2.API導入部分を自動で最新情報に更新できる
連携先のシステムの情報が更新されると、API導入部分も自動で最新情報に更新されます。情報を修正・更新するたびに人手を使って更新する必要がないため、情報更新の手間を大幅に省くことができます。
3.API仕様書があれば、外部ベンダーも開発できる
これまでは、ECシステムを提供しているベンダー企業でなければ、ECシステムの開発ができませんでした。しかし、APIの場合は、仕様書があれば外部ベンダーに開発の依頼をすることが可能になります。そのため、リソース不足を解消することができ、効率的なシステム開発につながるのです。
4.ECシステムのプログラム言語や環境を考慮する必要がない
API連携により、ECシステムのプログラム言語や環境を考慮する必要がないというメリットがあります。
従来のシステム開発では、システムごとにプログラム言語が異なっており、操作も複雑であったため、エンジニアに依頼する必要がありました。
しかし、APIでは「GET(所得)」や「POST(作成)」などのように、HTTPが決められているため、高度な専門知識がない人でも開発・連携することができます。
5.EC側で顧客情報を持たなくてよい
APIを導入すると、ECサイト側で顧客情報を管理する必要がないため、個人情報の流出や悪用などのリスクを抑えることができます。
自社開発システムよりも、セキュリティレベルの高いシステムの導入により、ユーザーの安心感も高まるでしょう。
6.ユーザーの利便性が上がる
APIの導入は、ユーザー側にもメリットがあります。
たとえば、ユーザーが会員登録をする際、従来は電話番号やメールアドレスなどを入力する手間がかかりました。しかし、API連携により、GoogleやSNSのアカウントを使用して会員登録をすることができるため、手間がかからなくなることから顧客満足度の向上や新規ユーザー獲得を期待できます。
ECサイトでAPI連携する4つのデメリット
ECサイトのAPI連携には、多くのメリットがある一方、デメリットもあります。
1.セキュリティは専用線に劣る
API連携により、顧客情報を自社で持つ必要がないため、自社の管理不足による情報漏えいのリスクが少ないと先述しました。しかし、APIのセキュリティは自社専用のネットワーク回線である「専用線」には劣ってしまいます。
APIは、インターネット回線を使用しているため、ハッカーたちによってAPI攻撃を受ける可能性が完全にないとは言い切れません。しかし、開発にコストがかかるため、専用線を用いたシステム連携を選択する企業は少なくなっています。
2.データロスの可能性
APIはインターネット回線を使用しているため、データロスの可能性もゼロではありません。インターネット回線は、ハードディスクに比べて原因を特定しにくいというデメリットもあります。
APIを使用する際は、定期的にバックアップを取り、データロスの対策を行うことが大切です。
3.APIサービス提供元への依存
APIは便利である一方で、提供が突然停止される可能性もあります。使用しているAPIが、提供されているサービスであることを忘れず、依存しすぎないことが大切です。
4.APIサービス提供元の障害発生の懸念
サービス提供元のサーバーに障害が発生した際にも、APIが使用できなくなる場合があります。顧客の信頼性を損なわないよう、リスクに備えて事前に対応方法を考えておくことが大切です。
APIの導入方法
APIの大まかな導入手順は以下の4ステップです。
API提供元への利用登録
まず、API提供元への利用登録などを行います。
登録には、「連携したいアプリケーションの名前」や「ドメイン名もしくはトップページのURL」「コールバックURL」などの情報が必要です。
「APIキー」と「シークレット」を取得する
利用登録が完了すると、IDの役割がある「APIキー」とパスワードの役割がある「シークレット」が発行されます。外部に漏れると悪用される恐れがあるため、厳重に保管しましょう。
ソフトウェアと連携
取得した「APIキー」と「シークレット」をAPI提供側のソフトウェアに登録すると、連携の準備が整います。
実装
APIの実装は、マニュアルの内容に従って行います。初めてAPIを実装する場合や不安な場合は、エンジニアに依頼すると安心かつスムーズです。
よく使われるAPIの具体例
以下では、シフトでよく使用している3つのAPIを紹介します。
会員連携API
会員連携APIは、顧客の購入履歴やお問い合わせ一覧などの顧客情報を管理できるサービスです。
顧客を分析し、戦略的な売上げアップに貢献できます。
在庫連携API
在庫連携APIは、複数のECサイトの在庫状況や顧客情報を一括で管理できるサービスで、売り逃しや顧客情報の二重登録などを防ぐことができます。
代表的なサービスには「LOGILESS」や「ZAICO」「クラウドトーマス」などがあります。
商品検索API
商品検索APIは、商品の検索結果を取得できるサービスです。
アフィリエイト料率や支払い方法などのさまざまな情報を見ることができます。楽天やYahoo!ショッピングでは、無料の商品検索APIが展開されています。
一般的に良く使われるAPI
以下では、一般的によく使われているAPIを紹介します。
Google Maps Platform
「Google Maps Platform」は、地図表示だけではなく、ルート検索APIや周辺地域APIなどによってさまざまな機能を使用できるサービスです。
具体的にはWebサイトにGoogleマップを表示させることや、設定した目的地までのルート、移動時間などを自動で割り出すことができます。
Amazon API
「Amazon API」は、大口出品者向けの「Amazon MVS API」とアフィリエイター向けの「Amazon Product Advertising API」の2種類があります。
「Amazon MVS API」では、納品や出荷などの情報を管理でき、「Amazon Product Advertising API」ではレビューや在庫状況などをリアルタイムで見ることができます。
SNS系API
InstagramやTwitter、You TubeなどのSNSにも、APIが活用されています。
InstagramプラットホームやTwitterのいいね機能、コメントの投稿・削除・タグ付けなどの機能もAPIのひとつです。
Twitter APIには、自社のWebサイトからツイートしたり、自動投稿したりできる機能もあります。
You Tubeでよく使用されているAPIは、「You Tube Data API」です。「You Tube Data API」では、動画の再生数やいいね、コメントなどの動画情報を取得できます。
シフトで構築したECサイトAPI連携の事例
弊社株式会社シフトが構築したECサイトでAPI連携をした事例をご紹介します。ここで紹介するサイトは全て弊社の独自開発したCMS「SITEMANAGE」を導入していただき、そのシステムと外部システムを連携させています。
1.大学生協様 オンライン書籍注文サイト
大学生協に加入されている組合員のみが利用できる書籍のECサイトを構築した事例です。
別のサイトで管理していた書籍データと在庫データをAPIで連携をしています。
2.胡蝶蘭コマース様 日本胡蝶蘭サイト
開業、就任、昇格、栄転などの贈答用の胡蝶蘭を通信販売しているサイトを構築した事例です。
こちらのサイトでは、別にECサイトを運用していたり、楽天やYahoo!などのモールにも出店していたため、注文データを別システムで管理していました。その外部システムと注文データを連携するため、APIで連携をしています。
3.帝国書院様 コーポレートサイト
社会科の教科書や地図の出版社の帝国書院様のコーポレートサイトを弊社で構築した事例です。このサイトではデジタル教科書や教材のライセンスを購入することができます。
そのライセンスの発行は別システムで行っているため、注文データをライセンス発行システムとAPI連携しています。流れとしては、ユーザーがライセンスを購入すると、注文情報をAPIでライセンス発行システムに送り、発行されたライセンス情報をCMSが受け取り、その情報をメールに記載して自動でユーザーに通知することが出来ます。
このほかにもAPI連携の実績はございますので、ご検討中の方はお気軽にご相談ください。
また、自社開発したCMS「SITEMANAGE」はお客様のサイトの運用方針に合わせて独自にカスタマイズすることが出来ます。他のECパッケージで実現できない要件があり、できるだけ費用をおさえてECサイトを構築したいとお考えの方は下のリンクから是非お問合せください。
ECサイトのカスタマイズについてはこちらの記事で詳しく説明しています。
カスタマイズ性の高いECサイト構築方法を比較!特徴的な事例も紹介
ECサイトのAPI連携まとめ
APIは2つのソフトウェア同士をつなぐ役割で、ECサイトのAPI連携により、時間とコストの大幅な削減やユーザー満足度の向上など、さまざまなメリットが期待できます。
専門的な知識が必要なく、比較的簡単に連携できるのもAPIの大きなメリットです。ただ、API連携にはデメリットも存在するため、ECサイトを立ち上げる際にはどちらも検討を重ね、API連携を進めるようにしましょう。